2026 年、なぜ「Claude 系ツールチェーン」だけ切り出すのか
生成 AI を前提にした開発フローでは、エディタ本体だけでなく、ターミナル上のエージェントや CI/ローカルスクリプトから api.anthropic.com などへ HTTPS でアクセスする場面が増えています。Claude Code のようなターミナル統合型ワークフローは、短い対話を高頻度で繰り返すため、わずかな経路のブレでも体感として「不安定」に感じやすいのが特徴です。
一方で、すでに公開している Cursor 向けのルーティング解説 は、拡張マーケットや IDE 周辺ドメインを中心に据えた別の製品スタックです。本稿では Cursor と重ねず、Anthropic API とその周辺(コンソールや認証まわりを含む)通信に焦点を当て、ドメイン指定とプロセス指定の両方から Clash ルール分流を組み立てる手順をまとめます。ルール列の基本は ルール分流の総覧記事 とセットで読むと理解が早いです。
「API が不安定」と呼ばれる典型パターン
実務でよくあるのは次のような症状です。(1)長めのストリーミング応答が途中で切れる。(2)短時間に多数リクエストを投げたあとだけタイムアウトが増える。(3)企業回線やキャリア経由では失敗するが、別回線では通る。原因は API 本体の障害だけでなく、ローカルの出口(DIRECT)とプロキシ出口の切り替わり、DNS の返答差、中間プロキシの挙動など複合的に絡みます。
ここで重要なのは、まず Clash の接続ログで実際のホスト名と策略の割当を見ることです。製品アップデートでエンドポイントが増えるため、古いチートシートを盲信せず、自分の環境で出た FQDN を正にします。一覧から関連記事を辿る場合は ブログ一覧 も活用してください。
ドメイン軸:Anthropic 向けを「先に」マッチさせる
mode: rule で運用している場合、広い GEOIP や最終 MATCH より前に、Anthropic 関連ドメインを専用の策略グループへ流すのが基本形です。代表的には api.anthropic.com、anthropic.com、必要に応じて claude.ai やコンソール周辺のホストがログに現れます。環境やログイン方式によって追加ドメインが増えるため、DOMAIN-SUFFIX を土台にしつつ、取りこぼしがあれば DOMAIN でピンポイントに足していくのが安全です。
DOMAIN-KEYWORD は便利ですが、anthropic のような短いキーワードは意図しないホストまで巻き込むリスクがあります。まずはログに出た具体的な名前から追加し、キーワードは最後の手段に留めるのがおすすめです。国内向けトラフィックを GEOIP,CN,DIRECT へ落とす構成では、この行が先に当たると海外 API まで直結のまま残ることがあるため、Anthropic 向けの細かい DOMAIN 行は CN 判定より上に置いてください。
プロセス軸:いつ効き、いつ危ないか
Clash Meta(Mihomo)系では、OS とクライアントの組み合わせによって PROCESS-NAME や PROCESS-PATH による振り分けが使える場合があります。典型例は Windows 環境で、特定の CLI 実行ファイルだけを専用策略へ流すパターンです。これにより、「ブラウザはこれまでどおり」「Claude Code を起動したターミナルだけ別出口」といった粗い切り口を作れます。
ただし node.exe や python のように共有される実行ファイル名をプロセスルールにすると、他の開発ツールまで同じ出口に吸い込まれることがあります。プロセス指定は実行ファイルの実パスが一意に決まるときに限定し、広すぎる名前は避けるのが安全です。macOS や Linux では環境差が大きいため、まずは ドメインルールで十分かを確認し、必要になった段階でプロセス側を足す、という順序が現実的です。
策略グループの選び方:固定、自動選択、フォールバック
「安定アクセス」を求めるとき、単に select で手動ノードを選ぶだけでも改善することがありますが、運用負担が高いです。実務では次のような組み合わせが扱いやすいです。(1)url-test または遅延計測付きの自動選択で、常に体感の良い出口を選ぶ。(2)その上位に fallback を置き、失敗時に別の自動選択グループへ逃がす。(3)最終的に select を残し、障害時だけ手で切り替えられるようにする。
本稿では便宜上、Anthropic 向けの入り口を AI-ANTHROPIC と呼びます。中身は既存の「海外用まとめグループ」を参照しても構いませんし、レイテンシ要件が厳しければ地域を絞ったノード集合だけを入れ子にしてもよいでしょう。名称のタイポは設定ミスの典型なので、GUI で改名したら rules: 側も同時に更新してください。
GEOIP や広い MATCH より必ず上に置いてください。
YAML の記述例(ホスト名とバイナリ名は環境に合わせて差し替え)
以下は説明用の断片です。ドメインとプロセス名は接続ログと実機のパスに合わせて調整してください。コピペのままでは動かない場合があります。
proxy-groups:
- name: AI-ANTHROPIC
type: fallback
proxies:
- 海外 low-latency url-test グループ
- 別リージョン url-test グループ
- DIRECT
rules:
# Process rules (example: Windows; verify executable name/path)
- PROCESS-NAME,claude.exe,AI-ANTHROPIC
# Domain rules (append hosts seen in your logs)
- DOMAIN-SUFFIX,api.anthropic.com,AI-ANTHROPIC
- DOMAIN-SUFFIX,anthropic.com,AI-ANTHROPIC
- DOMAIN-SUFFIX,claude.ai,AI-ANTHROPIC
- GEOIP,CN,DIRECT
- MATCH,既定の策略グループ
fallback の代わりに単一の url-test だけでも構いません。逆に、課金ノードと無料枠を分けたい場合は、策略を二段に分けて select で切り替えると運用が明確になります。
システムプロキシ、TUN、ターミナル単体の差
ターミナルツールが OS の HTTP(S)_PROXY を参照する場合、Clash のローカルポートへ向ければ上記ルールがそのセッションに適用されます。環境変数で直に別プロキシを指定していると、Clash を迂回するため、まずは env の値を確認してください。プロキシ非対応のバイナリや UDP を含む通信までまとめて扱いたい場合は TUN が有効です。スタックや権限の詳細は TUN モード解説 を参照してください。
DNS・fake-ip と「ルールは合っているのに不通」
enhanced-mode: fake-ip を使うと、ドメインルールと実際のコネクション確立のタイミングがずれ、一見ルールは PROXY なのに期待と違う経路になることがあります。Anthropic API のように長めの TLS セッションを張るクライアントでは、DNS のフォールバックや fake-ip-filter をセットで見直す価値があります。IPv6 が有効な回線では、IPv4 ベースの判定だけでは取りこぼすケースもあるため、経路とアドレスファミリの両方をログで確認してください。
効果の確認手順
- クライアントの接続ログを開き、Claude Code から短いプロンプトを実行して、想定ホストが
AI-ANTHROPICに割り当てられたかを確認する。 AI-ANTHROPICを一時的に地域の分かりやすいノードへ固定し、成功率やレイテンシの変化を比較する。- プロセスルールを入れた場合は、意図しない
node.exe通信まで巻き込んでいないか、ログで副作用を確認する。
よくあるつまずき
ルールを足しても挙動が変わらない
より上の行で別ルールに吸われている、策略名の綴りが一致していない、環境変数でプロキシが固定されている、といった理由が多いです。ログの「一致したルール行」と「実際の出口」を突き合わせてください。
国内サイトまで遅くなった
広すぎる DOMAIN-KEYWORD や誤ったサフィックス、雑なプロセス名指定が原因で、国内 CDN まで AI-ANTHROPIC に流れている可能性があります。まずログの FQDN を精査し、ルールを絞り込んでください。
まとめ
2026 年時点でも、AI コーディング周辺のエンドポイントは更新が早く、ルールはログを正にしたメンテナンス前提のリストです。Claude Code と Anthropic API のように、ターミナルから高頻度に叩くワークフローでは、ドメイン前置きでホストを確実に専用策略へ流し、必要なら プロセス名でスコープを補強する二段構えが効きます。Cursor 向け記事とあわせて読むと、「IDE 拡張」と「Anthropic 直 API」という別ツールチェーンを同じ Clash ポリシーの中で整理しやすくなります。
クライアントの導入や更新は、プラットフォーム別の入手先がまとまった ダウンロードページ から行うと、本稿の設定を追いながら検証しやすくなります。